【ニキビにピル?】ホルモン治療を皮膚科医がわかりやすく解説
2017-01-29更新
「ピル」と聞いて、あなたはどんなイメージを抱きますか?
多くの人が「避妊をするためのお薬」と思う方が多いと思います。1960年にアメリカで発売され、現在では世界180カ国、約9000万人の女性が利用しているポピュラーな避妊薬です。ところがこのピル、避妊以外に「ニキビのホルモン治療薬」としての効果があるとされ、近年注目されていることはご存じですか?
ここではピルによるニキビのホルモン治療の方法や副作用についてお伝えしていきたいと思います。
薬の効きにくいニキビの治療例 西川先生の治療日記 |
Index
1.ホルモン治療(ピルなど)がニキビに効く
男性ホルモン作用が減るとニキビは良くなる
そもそもニキビの原因の1つは、男性ホルモン作用の1つ「過剰な皮脂分泌」です。ホルモン治療(ピル内服など)をすることで、体内に絶妙なホルモンバランスの乱れが生じ、男性ホルモン作用が減少します。それにより、皮脂の分泌が減少する結果、ホルモンレベルでニキビが発生しにくい肌環境を作ることができるのです。
ピルがホルモンのバランスを変える!
多くのピルは「エストロゲン」と「プロゲストーゲン(プロゲステロン)」という2種類の女性ホルモンが主成分となっています。ピルを服用すると、体の中の女性ホルモンの量を変化させて、絶妙なホルモンバランスの乱れを起こします。それにより高確率の避妊が可能になります。ただ、女性ホルモンを補給することで、体には他にも嬉しい効果が出る事があります。その一つが「ニキビの発生を抑える・できているニキビを治す」ことです。
エストロゲンがニキビに効く
2種類の女性ホルモンのうち「エストロゲン」というホルモンは皮脂分泌を抑え、きめ細かい肌を保つという作用があります。そのためピルを服用すると体内のエストロゲン量が増え、皮脂の分泌が穏やかになりニキビになりづらい肌へと導けるのです。
1-1.スピロノラクトン:ピル以外のホルモン治療
ピル以外にもホルモン治療があります。
スピロノラクトンという飲み薬は、男性ホルモンを抑える作用(抗男性ホルモン作用)があります。
スピロノラクトンを飲むことで、男性ホルモンを抑え、ニキビができづらくなります。
スピロノラクトンだけでホルモン治療が行われることも多いです。
また、ピル単独ではニキビが良くならなかった人に追加でスピロノラクトンを使用することも多いです。
2.ピルの中にも「よりニキビのホルモン治療向き」のピルがある?
大抵のピルには「エストロゲン」は含まれていますので、どのピルを服用してもニキビ治療に効果があるといえます。しかし「さらにニキビ治療ピル」があるとしたら…魅力的ですよね?!それのカギはピルの中に含まれる女性ホルモンの1種「プロゲストーゲン」の種類にあります。ピルには「エストロゲン」と「プロゲストーゲン」の2種類の女性ホルモンが含まれていますが、この「プロゲストーゲン」は様々な種類があり、それによってニキビへの影響が変わるのです。
肌荒れホルモン:プロゲストーゲン(プロゲステロン)
「プロゲストーゲン」はどのような成分なのでしょうか。実は、「エストロゲン」とは違い、皮脂の分泌を促す作用のある女性ホルモンです。男性ホルモン作用に似ていますね。ただ、このプロゲストーゲンの種類により、皮脂を分泌させる作用が変わるのです。「多く皮脂を分泌させる」ものもあれば「少し皮脂を分泌させる」ものもあります。また、中には「皮脂を分泌しないように抑える」効果のあるプロゲストーゲンもあるのです。
当然、「ニキビ治療」に適したピルとは「皮脂分泌を抑制してくれる」か「皮脂の分泌をなるべくさせない」プロゲストーゲンです。では、どんな種類のピルの「プロゲストーゲン」がニキビ治療には向いているのでしょうか?
3.ピルなら何でもいいわけじゃない?「ニキビに効く」オススメのピルはどれ?
そもそもピルには様々な種類が存在します。その違いは、ホルモンの配合量・組み合わせで第1世代、第2世代、第3世代、第4世代の4つに分けられます。
前章でも取り上げたとおり、ピルは「エストロゲン」と「プロゲストーゲン」の2つの女性ホルモンが主成分でできています。「プロゲストーゲン」の中で「皮脂の分泌を抑制する」もしくは「皮脂の分泌が少ないもの」に注目して下記にまとめてみました。
ヤーズ 第4世代ピル
出典http://www.bayer-hv.jp/hv/products/product.php?cd=58
ヤーズは、第4世代のピルです。
「ドロスピレノン」というプロゲストーゲンが含まれているピルです。
ドレスピレノンというプロストーゲンは、皮脂の分泌を抑制する力のあるプロストーゲンです。
そのため、エストロゲンとの相乗効果が期待できる薬です。
ヤーズはアメリカ(FDA)でニキビ用に承認がおりている薬です。
また、PMSや生理痛、月経過多などに効くとして、健康保険が適用される薬でもあります。
ニキビ治療はもちろん、女性に嬉しい作用が詰まった低用量ピルといえます。
しかしながら日本ではニキビ治療薬としての認可が下りていません。
また日本の厚生労働省からニキビ治療として認可のおりているピルもありませんので、ニキビ治療目的には保険をしようできません。
マーベロン 第3世代ピル
出典https://di.m3.com/medicines?page=18
マーベロンは第3世代のピルです。
マーベロンには「デソゲストレル」というプロストーゲンが含まれています。
このプロゲストーゲンは、ほかのプロゲストーゲンに比べて、皮脂の分泌が少ないプロストーゲンです。
そのため、他のピルよりもエストロゲンの良さを大きく実感できるため、おすすめです。
トリキュラー 第2世代ピル
出典http://www.bayer-hv.jp/hv/products/product.php?cd=115
トリキュラーは第2世代のピルです。
トリキュラーには「レボノルゲストレル」というプロゲストーゲンが配合されています。
生理周期に合わせて、エストロゲン、プロゲストーゲンの量を自然のホルモン分泌パターンに真似ることで、プロゲストーゲンの量を抑えています。
4.ピルのメリット・デメリットを把握しよう。
ピルには高い避妊効果やニキビ治療に有効である反面、デメリットも存在します。服用する前に必ず、副作用についても頭に入れておきましょう。
メリット
1.月経困難症の改善
出血の量も期間も少なくなります。生理前や生理中の痛みや不快感も軽減されます。
2.生理周期のコントロール
生理不順がなくなります。服用のしかたにより、生理日をずらすこともできます。
3.ニキビや吹き出物が減り肌の調子が良くなる
4.長期的な服用により卵巣癌、子宮癌のリスクが減る
他にも、「骨粗しょう症予防」
「自律神経失調症(血管運動神経障害)の軽減」
「大腸がんの減少」
「関節リウマチの減少」
なども報告されています。
デメリット
1.頭痛や吐き気がでる
2.少量の不正出血がある
3.胸が張る
4.食欲が増す
5.血栓症のリスクが高くなる
血栓症に関してですが、低用量ピルを服用していない人では1万人につき0.3人から0.6人、低用量ピルを服用している人は0.9人から1.8人の発症率です。
6.子宮頸癌のリスクが高くなる
低用量ピルを服用していない人より1.3倍から2.1倍リスクが高くなります。
他にも、「脳卒中、脳梗塞」
「心筋梗塞」
なども報告されています。
また、ピルを服用しないほうがいい人もいるため、注意が必要です。
5.まとめ
ピルは避妊以外にも、ニキビ治療薬として有効な成分です。
また女性にとって様々な嬉しい効果をもたらしてくれることも期待できます。
ただ、副作用があることもきちんと把握しなければいけません。
ホルモンレベルのニキビ治療を始めたい方は、ニキビ専門クリニックで相談してみましょう。
薬の効きにくいニキビの治療例 西川先生の治療日記 |
6.もっとピルについて知りたい方へ
6-1.ニキビ治療のピルのやめ方
ニキビ治療のために飲み始めたピルをやめるときには注意が必要です。
ピルによってニキビのできづらいホルモンバランスになっていたものが、もとのニキビの出来やすいホルモンバランスに戻ります。
そのときに、十分なニキビ治療を併用しないと、ニキビがぶり返す人が多いです。
なのでニキビに対するホルモン治療は単独で行うものではなく、
- ホルモン治療+角質・皮脂対策(ディフェリンゲル・ケミカルピーリングなど)を開始する。
- ニキビが減り、肌質の改善を実感する
- ホルモン治療を終了するが、2-3ヶ月以上は角質・皮脂対策(ディフェリンゲル・ケミカルピーリングなど)は継続する
という流れが再発抑えるので、おすすめです。
6-2.避妊のために飲んでいたピルをやめたらニキビが出てきた。。。
ピルをやめると直後1ヶ月から半年間程度ニキビが急増する方がいます。
しかし、もともとニキビがなかった方は、ピルを中止後、一時的にニキビが増加しても、数ヶ月もすれば、ニキビは落ち着いてくる方がほとんどです。
ただ、ピル内服前にもともとニキビがたくさんあった方で、ピル終了後にニキビが再発してしまった方は、ニキビ治療をしないとニキビが継続するパターンが多いです。
ピルを内服している間は、ニキビができにくいホルモンバランスですが、ピルをやめるとニキビができていたころのホルモンバランスに戻ってしまいます。
皮脂分泌が過剰になっているのと、角質が増えやすい環境になっているのが原因であることが多いです。
ピル内服前にはニキビがあった人は、ピル中止後ニキビができはじめたらすぐに、皮膚科に行って治療を受けることをおすすめします。
皮脂分泌を抑え、角質をピーリングする作用のあるディフェリンゲルの使用が皮膚科保険治療ではおすすめです。
関連記事:
【ニキビの薬】ディフェリンゲルを皮膚科医がわかりやすく解説 |
【皮膚科ニキビ治療】3分でわかる!やさしい保険診療&ガイドラインベース |
6-3.ピルを飲み忘れた時の対策は?
ある調査では8割の人がピル飲み忘れたことがあるという、衝撃的な数字が出ています。
なので、しっかりと飲み忘れた時の対策を覚えておきましょう。
1錠だけ飲み忘れた場合
飲み忘れた錠剤をすぐに服用しましょう。
残りの錠剤は予定通りに服用しましょう。
2 錠以上の飲み忘れた場合
飲み忘れた錠剤のうちもっとも新しものをすぐに服用しましょう。
残りの錠剤は予定通り服用します。
7 錠以上連続して服用するまピル以外の方法でしっかりと避妊をしましょう。
この記事の監修医師
西川嘉一
Hirokazu Nishikawa
ニキビ治療のエキスパート。ニキビ・美肌・くまの専門家。東京大学医学部卒。
業界大手・銀座院長を経て、ニキビ専門皮膚科【アクネスタジオ】を開院。
一ケ月に1000人以上がアクネスタジオを訪れている。